『クレーム』を辞書で調べると、サービスや商品に対しての苦情や何らかの損害を被った場合の請求行為と記されています。
今回はクレーム対応について私なりの考えを述べてみたいと思います。
まず大前提としてクレームには正当なものとそうでないものの2種類に分けられます。
この2つは全く別のものですので、当然とるべき対応も異なります。
正当なクレームは、聞き入れると同時に改善すべきポイントも見えてきます。
私が接客業をおこなっている頃に経験したクレームの大半がこのパターンでした。
お客様は、改善してほしい点を当該スタッフに直接伝えることもあれば、責任者に伝えたり、または言いやすい相手を選んで伝えることもあります。
私はお客様対応のリーダーとして勤務していましたので、3番目の理由でクレームを伝えていただく機会が多くありました。
さらりと短めにおっしゃる方やアンケートなどに書き込んでくださる方、またご自身のいろいろな想いを込めて長めのお話をされる方など、伝え方は人それぞれです。
無記名の書き込みなどはまた別として、忘れてはならないのが、どのような伝え方であったとしてもお客様は言いにくいことを言ってくださっているのだということです。
誰かに対してネガティブなことを言うのは結構エネルギーがいると思いませんか。
これをわざわざ時間と労力を費やして伝えてくださること自体、本来ありがたいことなのです。
でも心に余裕がないと、せっかくのお客様のご厚意を素直に受け取ることができず、責められたと捉える人もいるようです。
もしくは、自分がどこかでクレームを伝えるときに、相手を責める気持ちで言っているのかもしれませんね。
人は自然と自分基準で物事を捉えます。
自分の根っこの部分にある考え方を元に、人からの言動を受け取って判断するのです。
自分がクレームを伝える側になった時に、相手を想う気持ちを意識していれば、立場が逆になった時の受け取り方も変わるかもしれません。
自分自身の意識が変化すると相手に対する考え方も変わります。
そうすれば自然と「おっしゃる通りです。」という言葉が出てきて、言い訳をせずに相手の話をしっかり聞くことができます。
「ご指摘いただきありがとうございます。」という感謝の気持ちもあらわれてきます。
さらには「社内で情報共有をして改善に努めます。」という心からの言葉が生まれるのです。
口先だけではない心のこもった言葉を受け取れば、お客様の心も少しは穏やかになってくださることでしょう。
でも、もちろんここで終わってはいけません。
「改善に努めます。」という言葉通りの行動を起こさなければなりません。
ここで、クレームの事実を会議の場などに持ち込む際の注意点があります。
それは伝えてくださった『人』ではなくクレームの『内容』に焦点を当てることです。
もちろん、誰からのクレームなのか隠す必要はありませんが、それよりも大切なのは内容だと言うことを忘れてはなりません。
人が重要視されると、その相手にだけ丁寧に接したり要注意人物のような扱いになってしまうからです。
そうなるとせっかく教えてくださった改善点のヒントが薄れ、また同じことを繰り返してしまう傾向にあるのです。
クレーム対応を活かせるチームとそうでないチームとの差はここで生まれます。
クレームを受け取った人は、誰からのクレームかというよりも内容を重要視した上で、適切な部署に報告することを忘れないでください。
さて、クレームにはもうひとつのパターンがあります。
それは人間のエゴによるものです。
エゴによるクレームとは、説教欲を満たすためやストレス発散のために相手を罵ったり、酷くなると人間性まで否定してくるなど、前者とはまったく目的が異なるものです。
お客様からのクレームに限らずこれに苦労している人は多いのではないでしょうか。
上司から部下へのダラダラとした説教もこれに当てはまることがありますよね。
「君のことを想って」と口では言っていても、受け取る相手にその『想い』が伝えられないのなら、それはエゴになってしまいます。
親子間でも上司と部下であっても、本当に相手を想いそれを伝えたいのであれば、伝わるような方法をとらなければなりません。
伝わらない方法にいくら時間費やしても意味がないのです。
こういったエゴに付き合わざるを得ない場合の対処法としては、話の内容に焦点を当てずにクレームを言っている人そのものに焦点を当ててみてください。
先ほどの正当なクレームとは全く逆の考え方です。
人に焦点を当てて捉えることで、その状況を客観的に見ることができます。
あくまで内容がただの罵りやストレス発散のための言葉の暴力であった時のことですよ。
そんな意味のない内容に心を乱される必要はありません。
人に焦点を当てて状況を客観的に捉えてみると、内容を心に残さず聞き流すことができます。
「この人のこのストレスはどこからきているのだろう?」や「この人はなぜ、ひとに対して酷い振る舞いができるのだろう?」と、相手の心理状態や人間性などを分析してみるのも良いかもしれません。
こういった捉え方をするようになると、さらにこんな考えを持てるようになります。
相手を許すのです。
自分を罵っている相手を許してあげよう、そう思ってみてください。
その時点で立場が逆転していることになります。
『罵っている人vs言われて耐えている辛い自分』という構図が『罵っている人vs許してあげる寛大な自分』になります。
そうすると心理的に自分の立場の方が優位になっているのです。
考え方、捉え方次第では同じ出来事でも自分の心が変わってきます。
私は『パワハラ』や『カスハラ』を我慢してくださいと言っている訳ではありませんよ。
もちろん必要な際には声を上げて適切な対処をすることが大切です。
ただ、考え方によっては自分自身の心が楽になることもあるのだということをお伝えしたいだけなのです。
日本人は特に我慢強く「自分さえ我慢をすれば…」と抱え込む人も多いでしょう。
しかし、そうして我慢をした被害者のストレスが、別の場所で誰かへの加害行為の引き金になっていては意味がありません。
自分の心が健康的でないと、ひとに寛容にはなれませんしひとを認めることもできないですからね。
今回のこの記事が『クレーム対応』について悩む誰かのお役に立てれば幸いです。